ほとんどの皆さんは、会社など何らかの組織に属して仕事をされているかと思います。
そうすると組織に所属する以上避けられないのが、上司・部下の関係です。
このシリーズでは、「上司も知るべき基本動作」と題して、部下だけでなく、上司も知っておくべき内容という観点で基本動作について考察していきます。今さら基本動作?とお思いになるかもしれませんが、きちんと基本動作ができている人は、意外と多くないようにも思えます。
第1回は、これを差し置いて基本動作は語れませんよね、「報連相」。
新人研修などで真っ先に叩き込まれる言葉であると言っていいでしょう。言わずと知れた「報告」「連絡」「相談」の三つをまとめた社会人必須の基本動作です。
今回は報連相の中でも最重要と思われる、「報告」について考察します。
報告の必須要件
ここでは、「5W1H を含める~」とか「数値で定量的に書く~」などの具体的な報告の書き方の内容には触れません。報告内容そのものではなく、上司・部下の関係性の観点で、適切な報告について考察していきます。
さて、「報告」がどのようなときに必要となるか、という切り口で考えてみると、上司が信頼して仕事を任せられる部下には必ず満たしていなければならない条件が思い当たります。
それは、部下自身の手に負える範囲を越える状況となりそうな場合(またはそうなる可能性が充分想定される場合)、この部下は必ず報告をしに来て、リスクを認識してもらい判断を仰いでくる、と思われることです。
上司が部下に安心して仕事を任せられるな、と思うのはどういう段階か。「こいつは細かいことは聞きに来ないし報告もしてこないが、必要なときや自分の手に負えない事態が発生しそうなときには、間違いなく報告、相談してくる。」と確信が持てたときではないだろうか。
— shake (@shakelogcom) August 30, 2017
この条件が満たされない場合、「報告を受けた時点で既に手遅れだった」などのような事態が多発し、「早めに報告を受けていれば対策の立てようもあったのに…」と上司は途方に暮れ、火消しに奔走することになります。
さらに、報告が遅れれば遅れるほど、事態は悪化していきます。「顧客からのクレームを受けて初めて問題が発覚した」なんて目も当てられない状況も発生するかもしれません。「炎上の匂いをいかに早く嗅ぎ取れるか」が、明暗を分けると言っても過言ではないでしょう。
渋谷風に言えば、
- ヤバいのは、ヤバそうなときにヤバそうって言わないやつ。
- もっとヤバいのは、もう既にヤバいのにヤバいって言わないやつ。
- もうヤバいなんてもんじゃないのは、もう既にヤバいのにそれがヤバいってことにすら気付いてないやつ。
と、いうことですね。
ヤバいときに、ヤバいと認識し、いまヤバいです、またはもうすぐヤバくなりそう、ときちんと報告してくる、それが部下には求められています。
「適切な報告」のメリット
適切な報告は、部下・上司双方に多くのメリットをもたらします。それぞれの視点から見ていきましょう。
部下自身のメリット
もちろん直接的なメリットとしては、経験豊富な上司に、適切なアドバイスを貰い、問題解決や状況の改善の糸口を見つけられる可能性があることです。上司が妙案を授けてくれ、失敗を回避できるかもしれません。もうどうしようもない状況であったとしても、事態の鎮静化のために謝り侍となってあなたと一緒に頭を下げて回ってくれるかもしれません。会社という組織で仕事をしているのですから、個人の独力のみで仕事を遂行しなければならないことなどありません。是非とも、社内の有識者としての上司を活用すべきです。
また、適切な報告は、あなたの手に負えない難しい状況を、「あなただけ」の問題ではなく、「その仕事に係る組織全体」の問題として認識してもらうためにも役立ちます。きちんと報告がなされていれば、例え結果が失敗であったとしても、その失敗は「その仕事に係る組織全体の失敗」と認識され、「あなた個人の失敗」とは見做されません。適切な報告は、あなた自身を守るためでもあるのです。
上司側のメリット
直接的なメリットとしては、「問題を早期に認識できる」ということです。兎にも角にも認識さえ出来ていれば、その問題がまだ小さく「まだしばらく様子を見ておいてよいだろう」とか、大問題に発展しそうな兆候を感じ取った場合には「ここは大事をとって早めに手を打っておこう」といった「作戦」を考えることができます。
しかしながら、報告が遅いと、その「作戦」を考える時間的猶予がありません。方針が「何もせず様子見」に決まったとしても、「問題を認識したうえで、様子見と判断した」ということと、「何も知らなかったので何もできなかった」ということの間にはとてつもなく大きな差があります。
さらに、上司側にはもう一つ大きなメリットがあります。
部下は発生した状況に対して、自分の手に負えるか、手に余るか、の見極めを正確に行えることが必要だ。自分の手に負えない状況をきちんと報告することができ、「あいつが何にも言ってこないときは、つまり順調だということだ。」と思われれば、信頼が強固になりつつあると考えてよいだろう。
— shake (@shakelogcom) June 10, 2017
それは、適切な報告のできる部下に仕事を任せた場合、上司はその仕事について完全に手と目を離すことができる、ということです。上司はもはや、「あの件どうなった?」「何か心配事は無いか?」などといちいち気にかける必要はありません。何故なら、ヤバい事態になれば、その部下はきちんと報告してくるからです。
この状態を、「真に仕事を部下に任せている状態」と理解するのが良いでしょう。逆に言えば、部下に任せたはずの仕事をいちいち気にし、細かくチェックしないと安心できないようであれば、それは「任せた」状態とは言えません。
もしあなたが上司だとして、部下の仕事の状況が気になって仕方がないとしたら、そこには二つの可能性が考えられます。「部下が自身の手に負えるか手に余るかの判断を行えず、適切な報告を出来ていない」のか、「上司であるあなたが、既に自立している部下を信頼する勇気が足りず、単に臆病である」のか、どちらかです。上司は自身の行動がどちらであるのか慎重に見極める必要があり、後者であるならば是正すべきは自分の行動の方です。
上司が部下の仕事に細かく口を出し、部下に裁量を与えない管理手法「マイクロマネジメント」が、部下のやる気や生産性を著しく削ぐことはよく知られています。適切な報告のできる部下に、過剰に干渉する必要は無いでしょう。
ここまで上司・部下という表現を使ってきましたが、この内容は誰しも例外ではありません。通常の多階層の組織構造では、上司もさらに上の誰かの部下であることが一般的であるからです。部下のためにも、自分のためにも、さらには自分の上司のためにも、適切な報告を心掛けていきたいものですね。
今回のまとめ
- 部下は発生した状況に対して、自分の手に負えるか、手に余るか、の見極めを正確に行い、適切に報告することが必要。
- 報告は、手に負えない状況を個人で抱え込まず、組織として対応するための前提でもある。ヤバそうだと思ったらとりあえず一報しよう。
- 上司は既に自立し、適切な報告のできる部下の邪魔をしてはならない。信頼と勇気を持って、部下に仕事を任せよう。
ではでは今回はこの辺で。
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