ビジネス思考

考える力の考察「論理的思考能力」①定義

突然ですが、クイズです。以下の論証は、正しいでしょうか?
(※「カミン」は「みかん」をもじっただけの架空の果物です)

  • みかんによく似た新種の果物カミンには、カミンナーゼという成分が含まれていることが分かった。
  • カミンナーゼには、癌の予防に効果があることが分かった。
  • 従って、カミンを食べることは、癌の予防になる。


……

…………へ??

いや、だってカミンにはカミンナーゼが入ってて、カミンナーゼは癌の予防になるんでしょ?てことはカミンを食べれば癌の予防になるよね!どこもおかしなとこ無くない……??

残念ながら、そう思ってしまった方はきちんと論理的に考えることが出来ていないかもしれません。

さて、 考える力の考察 第4回は「論理的思考能力」です。世の中では、”思考能力” と単に言ったら、ほぼ論理的思考能力を指していると言っても過言ではないくらい、考える力の代名詞として認知されていると思います。しかしながら、どのような要件を満たせば「論理的」と言えるのか、何をもって「論理的に正しい」と言えるのか、曖昧なままこの言葉を使っていることは少なくないかもしれませんね。

冒頭のクイズの正解は順を追って説明していきますので、はやる気持ちを抑えて(?)、まずは定義から考察していきましょう。

考える力の考察 記事一覧
第1回「考える力の重要性」
第2回「汎化能力」
第3回「想像力」
第4回「メタ認知能力」
第5回「論理的思考能力」①定義(本記事)
第6回「論理的思考能力」②妥当な根拠

「論理的」とは?

まずは辞書上の意味から。

ろんり‐てき【論理的】の意味

  1. 論理に関するさま。「論理的な問題について書かれた本」
  2. 論理にかなっているさま。きちんと筋道を立てて考えるさま。「論理的に説明する」「論理的な頭脳の持ち主」

引用)論理的(ろんりてき)の意味 – goo国語辞書

うーん、あまり理解が進みませんね。この説明は、ほとんど「論理的」の “的” のみを言い換えただけに過ぎず、肝心の「論理」についての説明があまりありません。唯一「きちんと筋道を立てて考える」という点だけが意味のある説明でしょうか。

「論理学」という学問分野があるので誤解されがちですが、実は「論理的」という言葉は学術用語ではありません。あくまでも「論理 ““」なのであって、「論理学っぽい何か」なのです。そのため、「論理的」について調べてみても、驚くべきことに明確で統一的な定義が見当たりません。そのため、この言葉を改めて定義してあげることにします。

「論理的」とは、「妥当な根拠があること」です

定義は極力シンプルな方が良いでしょう。「根拠」は、”論理的” から一文字取って、「論拠」という言葉に置き換えてもよいですね。さて、この「根拠」とはどのようなものでしょうか。具体例を見ていきましょう。

「論理的な主張」と「根拠」の例

(参考:論理的な会話の例 – 論理的思考力と論理的な議論

Aさん:「Bさんは、太るよ。」

この主張を、論理的だと思う人は皆無でしょう。なぜなら、主張だけで根拠が全く示されていないからです。これではBさんに名誉毀損で訴えられても仕方がありません。
では、次ならどうでしょうか。

Aさん:「Bさんは、太るよ。だって、毎日昼食がファーストフードだから。」

こちらは、先程より幾らか論理的です。なぜなら、根拠が示されているからです。高カロリーのハンバーガーやフライドポテトが連想される、ファーストフードで毎昼食事をしていることが、太る根拠として挙げられています。
さて、それに対してBさんはこう反論します。

Bさん:「太らないよ。だって、食べているのは豆腐バーガーで、フライドポテトはサラダに変更、飲み物はダイエットコーラだから。しかも、夕食は鶏ささみのサラダだけにしてる。」

これは、より論理的な反論です。ファーストフードで食事していることは認めたものの、先程の主張の根拠であった、高カロリーのメニューを一つずつ否定しています。さらに、昼食だけでなく夕食でもヘルシーな食事としていることを根拠に追加して、主張を補強しています。

このように、何かを主張する際には根拠を提示することで、より論理的な主張になります

根拠としては、実際の数値や数学・論理学などの、誰にとっても明瞭で解釈のぶれないツールを採用するのが望ましいです。Bさんのように、複数の具体例(豆腐バーガー、サラダ、ダイエットコーラ)を挙げたり、多面的(昼食だけでなく、夕食についても言及)に主張を補強してもよいでしょう。カロリーの数値も添えられれば完璧ですね。統計学も概ねこれに準じますが、実データを用いる際の標本サンプルの偏りや、相関関係と因果関係の混同などに注意が必要になります。

「論理的思考能力」とは?

さて、「論理的」とは「妥当な根拠があること」でした。
これに「思考能力」を付け加えた「論理的思考能力」とは、どのような思考能力ということになるでしょうか。

論理的思考能力とは、

  • 自分が何かを主張する側であれば、「妥当な根拠を提示できる力」
  • 自分が誰かの主張を聞く側であれば、「根拠が妥当であるかを判定する力」

のことです。
(後者は、例えば作った資料を上司に見せて、「なーんか、違う気がするんだよなぁ…」と言われたことはありませんか?あれです。)

その根底には、「ある根拠Aから、結論Bが本当に導かれるのかどうか」を厳密に見極める力が在ります。

ここで冒頭の問いに戻ってみましょう。

  • みかんによく似た新種の果物カミンには、カミンナーゼという成分が含まれていることが分かった。
  • カミンナーゼには、癌の予防に効果があることが分かった。
  • 従って、カミンを食べることは、癌の予防になる。

さて、これに一つ前提を加えて、以下の条件であったらどうでしょうか?

  • みかんによく似た新種の果物カミンには、カミンナーゼという成分が含まれていることが分かった。
  • カミンナーゼには、癌の予防に効果があることが分かった。
  • ただしカミンには、発癌性物質ガンニナルゼという成分も大量に含まれていることが分かった。
  • 従って、カミンを食べることは、癌の予防になる。

はたまた、以下だったら?

  • みかんによく似た新種の果物カミンには、カミンナーゼという成分が含まれていることが分かった。
  • カミンナーゼには、癌の予防に効果があることが分かった。
  • ただしカミン1個に含まれるカミンナーゼの量は非常に少なく、一日あたり一万個分のカミンを食べないと有効に機能しない。
  • 従って、カミンを食べることは、癌の予防になる。

こう考えてみると、どうやらこの結論は必ずしも正しいとは限らないようです。この問題の正解は、「カミンを食べることは、癌の予防になる “可能性がある”。」というところまでで、決して断言することは出来ません。

「待って!そんなの最初書いてなかったじゃん!後出しはずるいよ!!」と思うでしょうか? 確かに、ちょっと意地悪だったかもしれませんね。でも、本当にそんなにずるいことでしょうか?

あなたが医薬品の開発責任者で、カミンナーゼの効能の第一発見者であり、「癌の予防になる」と大々的に論文やプレスリリースを出して既に飲料メーカーと提携し果汁100%カミンジュースが生産ラインに乗っている。そんな中、上の事実が追加で判明したら、一体誰に「聞いてなかった」とか「ずるいよ!」と文句を言えばよいのでしょう。そんな事態になったら、安易な判断をしてしまったことに対する責めを免れることは難しいでしょうね。

繰り返しになりますが、このような事態に陥らないようにするために、書いてある根拠から、本当にその結論が導かれるのか、必ずしもその結論が導かれるとは限らないのか、を厳密に見極めることが重要になります。

厳密に考えることの重要性

世の中には、匿名のネット掲示板やSNSで拡散される口コミ、テレビのニュース、雑誌や新聞まで、様々な情報ソースが溢れていますが、それらの主張の根拠は示されていないか、むしろ示されていてもその主張をするために都合の良いデータばかりを選んでいることがとても多いです。(筆者本人がその偏りを自覚しないまま、書いている場合もあります。)その主張にとって都合の悪い事実やデータは、当然書かれておらず、読者に無断で、勝手に捨てられています。

大量の情報が飛び交う現代は、情報を鵜呑みにする時代ではありません。

私たちにとって望ましい行動は、その情報に踊らされて既に誤った判断をしてしまった後に、「騙された!そんなことは聞いていなかった、卑怯だ!!」と文句を言うことではなく、書かれていない前提や判明していない条件が「当然あるはず」であると認識し、厳密に考え、他の可能性を想定し、予め考慮に入れておくことです。

毎日のお昼ご飯をどこで食べるかを厳密に考える必要は無いでしょう。しかし、重要顧客との商談を行う会食であったら? いざという時、大事な決断のとき、絶対に失敗できないとき、人生における重要な局面になればなるほど、厳密に考えることの重要性はそれに比例して高まります。このようなとき、論理的思考能力が必ず役に立ちます。

さて、考える力の代表格、論理的思考能力はさすがに一回では考察しきれませんね。次回は、「論理的であるためには妥当な根拠が大事っていうことは分かったよ。けど、じゃあ具体的にどうなったら根拠が “妥当” だと言えるの?」ということについて深堀りしていきます。お楽しみに。

→「論理的思考能力」②妥当な根拠 は、こちら。

今回のまとめ

  • 「論理的である」とは、「妥当な根拠がある」ということ。根拠としては、数学、論理学、具体例などの人によって解釈のぶれないツールを採用するのが望ましい。
  • 「論理的思考能力」とは、「ある根拠Aから、その結論Bが本当に導けるのかどうか」を厳密に見極めることのできる力。
  • 世の中には、真偽の怪しい適当な情報が溢れている。鵜呑みにするのではなく、必ず自分の頭で考え、咀嚼し、間違いのない判断をしよう。

ではでは今回はこの辺で。

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