「なんか最近、前に進んでないなぁ…」と感じることってありませんか?
なにかこう、同じことを繰り返しているような、ただ時間を浪費しているだけのような、既に通った道を堂々巡りしているような、そんな感覚。
今回は、そんな漠然とした不安とその対処法、前進について考察します。
漠然とした不安は、前進することで払拭される
いきなりほぼ答えです。将棋の羽生善治棋士がとても良い言葉をおっしゃっています。
漠然とした不安は、立ち止まらないことで払拭される。 – 羽生善治 –
漠然とした不安の正体は、「このままいくと、なんだかマズい気がする…」という、「現状の延長線上には、望む未来がない」という自己認識だと私は考えています。
図にすると、こんな感じ。
Figure.1 このままいくと、譲れない最低ラインを下回る
上り調子でも不安を感じるパターンも。
Figure.2 このままいくと、達成したい目標ラインに到達できない
考える力の考察「想像力」で考察したように、人間には想像力があり、未来の状態を予想し、そこから得られた洞察を現在の行動にフィードバックさせる力があります。
漠然とした不安を振り切る勇気を持つためには、「これは自分の心が生み出した幻想だ!恐るることはない!」と思い込むことも重要ではありますが、実際のところ「漠然とした不安」は、決して心が生み出した実体のない幻想ではなく、健全に想像力を働かせた結果得られた「現状への警告」だと捉えるべきでしょう。心が発した、「このままじゃマズい!」という警告シグナルだと認識すべきです。
羽生棋士のこの言葉で検索すると、「動き続けていれば考える暇が無くなり気も紛れるので不安を覚えることもない。だから、とにかく動け!」という解説が見つかったりするのですが、私は少し違うふうにこの言葉を理解しています。
- 立ち止まらない、だけでは弱い。
- 闇雲に動けばよいというものではない。
- “意味のある動き” でなければ、意味がない。
漠然とした不安を振り切り、「現状の延長線上に、望む未来がある!」と自分自身で信じられる状態になるためには、「現状を改善させる意味のある動き」が必要です。
それが、「前進」です。
少しずつでも確実に前進している、その確かな実感さえあれば、不安はもはや「漠然とした不安」ではなく、単なる「具体的な実行上の課題」として処理や対処が可能となるでしょう。
「前進」は「成長」と一体である
さて、改めて「前とは何か」を考えてみます。
人は、どういう時に、何をもって「いま前に進んでいる」と感じるのでしょうか?
「前に進んでいる」と感じるのは、成長していると思うとき。
「成長している」とは、出来なかったことが出来るようになること。
昨日の私よりも今日の方が、今日の私よりも明日の方がもっとすごい!そう現在進行形で断言できるとき、人は前に進んでいると感じるのではないでしょうか。
今まで出来なかったことを、出来るようになるよう努力し、現状をより良い状態に向上させていく行動、それが前進です。
Figure.3 前進によって、現状を改善させる
しかしながら、人はいつもそう簡単に前進できるわけではありません。すぐには成長が実感できなかったり、大きく前進しようとするためには一旦何かを手放さなければならないことがあります。安定や安心、居心地の良い環境、手慣れた仕事、慣れ親しんだ習慣などです。
漠然とした不安を払拭するために前進が必要なのに、その前進をするために、今度は何かを手放さなければならない。一難去ってまた一難、二重苦のような試練が続きますが、残念ながら、その先にしか望む未来が無い場合は多いです。ロケットが燃料を後方に噴射した反作用で前に進むように、我々も勢いよく前に進むためには、思い切って何かを後ろに置いていくことが必要になるのかもしれません。
Figure.4 前進するために、一旦下がって助走をつけることが必要な場合もある
何か新しい一歩を踏み出すのは怖いものですが、そんなとき、私はこう思うようにしています。
鼻垂らして遊び呆けてた高校生が、4年だか6年だかすると、研究者やパティシエ、医者、大工、警察官、デザイナー、たまにはサッカー選手や社長になっちゃうひとだっているわけです。
60歳からドラムを始めれば、65歳で smoke on the water くらい叩けるようになっているでしょう。70歳からサーフィンを始めたっていい。
いつからでも、何にでも、なれる。
…はず(苦笑)。
一時的にパフォーマンスが落ちたり、譲れない最低ラインを割ってしまったり、行きたい方向と逆行してしまっているように思えても、本当に望む未来を見据えて進んでいるのであれば、それは前進です。
その状態であれば、「今向いている方向が前」で、合ってます。ブレずに、目線はそのままで、進んでいけばよいと思います。
「停滞」と「後退」は同義である
ついでに、前進の反対の「後退」についても。
私は、
「停滞」と「後退」は同じもの
だと考えています。
韻を踏んでいて響きが似ている、というだけではありませんよ。私は「立ち止まっている」、つまり「ピタリとその場に静止している」という状況は、現実にはほとんど無い、と考えているためです。
物理学や化学では、「動的平衡」という考え方があります。互いに逆向きの過程が同じスピードで進行することにより、系全体では変化が無いように見える状態をいいます。これと同様に、現状とは前進と後退の綱引きの結果であると考えることができるでしょう。
時間は否応無しに過ぎていき、必ず人は老い、衰えます。ときに「何もしないこと」を「現状維持」と表現する場合がありますが、本人は現状維持のつもりでも、何もしなければ、少しずつ、だが確実に、後退していくと考えるべきです。そして、現状を「動的平衡」させるだけでも、自然発生する体力の衰え、ブランク、人生の残り時間の減少などの「後退」分を打ち消すだけの「前進」が最低限必要になります。
停滞している状態は、後退している状態に等しい。
これぐらいの前傾姿勢が、「気付いたときにはだいぶ後退してしまっていた」なんて事態に陥らないために望ましいのではないでしょうか。
「前進」チェックリスト
- ① 今、「自分は前進している」と認識しているか?
- ② 最近、「自分の成長」を実感できているか?
- ③ ここ3ヶ月で、新しく「出来るようになったこと」はあるか?
これらは、三つの質問の体裁を取っていますが、本質的には全く同じことを聞いています。
このリストの狙いは、
- 三つ全てが “No” であった場合、それは「後退している」状態であると認識すること
- ③が “Yes” であるなら、その小さな一歩に気付き、それを束ねることで、大きな前進に繋げるきっかけにすること
です。
さて、改めて聞かせてください。
あなたはいま、前進していますか??
今回のまとめ
- 漠然とした不安の対処法は、たった一つ。前進し続けること。
- 「前進」とは、成長すること。「成長」とは、出来なかったことが出来るようになること。大きく前進するためには、何かを手放してでも、一旦下がって助走をつけることが必要な場合もある。
- 「停滞」と「後退」は同じだ、と思うくらいの姿勢がいい。現状維持なんて言ってると、すぐ置いていかれちゃうよ。
ではでは今回はこの辺で。
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