皆さん「マシュマロ・テスト」って、ご存知でしょうか?
マシュマロ・テストとは、子供を対象にした有名な心理学の実験で、一言で言えば「マシュマロをすぐ食べずに我慢できた子は、将来社会的に成功する可能性が高い」ということを示した実験です。
考案から約50年、長らく「自制心の重要性」や「社会的に成功するための子育ての方法」といった文脈で引用の多かったマシュマロ・テストですが、最近発表された大規模な再実験ではあっさりその再現性が否定され、自制心と社会的成功の関連性も限定的であるという結果が提示されました。
結局、マシュマロ・テストとは一体何を測っているテストだったのでしょうか?
マシュマロ・テストから得られる、有益な学びや真理は何だったのでしょうか?
今回は、マシュマロ・テストについて考察します。
マシュマロ・テストとは?
マシュマロ・テスト(マシュマロ実験)とは、アメリカの心理学者ウォルター・ミシェルが1960~70年代に実施した有名な実験で、幼少期の自制心と将来の社会的成果の関連性を調査したものです。
実施方法は以下のとおり。
- 4歳の子供を一人ずつ、気が散るようなものが何もない部屋に通す。机の上には皿に載せられたマシュマロが1つ置いてある。
- 実験者は「私が出掛けて帰ってくるまでの15分間マシュマロを食べるのを我慢したら、マシュマロをもう1つあげる」と子供に告げて部屋を出る。
- その後の子供の行動を観察し、食べるのを我慢できた時間や、15分耐え切って「2つ目のマシュマロ」を手に入れることが出来たかを記録する。
百聞は一見に如かず、ですね。
苦悩しながらも必死にマシュマロを食べまいとする子供たちのなんとも愛らしい様子は以下で見ることができます。(音が出ますので注意、でもほんとに可愛いので是非♪)
さて、このオリジナルのマシュマロ・テストの実験結果では、「2つ目のマシュマロ」を手に入れることができた子供は全体の3分の1程度でした。そしてその後の追跡調査の結果、そのグループは周囲から優秀と評価され、アメリカの大学進学適性試験(SAT)のスコアが高く、大人になってからの収入も多かったとされています。さらには、肥満指数が低く、目標を効果的に追求し、欲求不満やストレスにうまく対処できるとまで言われています。
これらの結果から、ウォルター・ミシェルはマシュマロを食べずに我慢すること、つまり目先の欲求を満たすことを辛抱する力こそが、社会的成功に影響すると考えたようです。
マシュマロ・テストの結果の二つの解釈
マシュマロ・テストの結果は、現在では発達心理学と行動経済学の二つの学術分野から考察されています。それぞれ見ていきましょう。
発達心理学の観点「自制心」「欲求充足の先延ばし」
先に述べたように、ウォルター・ミシェルはマシュマロを食べずに我慢すること、つまり目先の欲求を満たすことを辛抱する力こそが、社会的成功に影響すると考えました。これらは「Self-control(自制心)」「Delayed Gratification(欲求充足の先延ばし)」と表現されています。
「我慢強い方が社会的に成功しやすい」という主張は、端的で分かりやすく、直感的にも経験的にも違和感はありませんよね。そのため、この解釈は今まで何となく信じられていた経験則を科学的に実証したものとして広く受け入れられたようです。
行動経済学の観点「時間選好」
行動経済学の観点では、マシュマロ・テストの結果は「時間選好」という概念で語られます。
将来に消費することよりも現在に消費することを好む程度を、時間選好率 rate of time preference あるいは単に時間選好と呼ぶ。
引用)時間選好(じかんせんこう)とは – コトバンク
時間選好とは、「”いま”の価値を高く評価する傾向」のことを表します。将来のことよりも現在のことを重視する性質、と言い換えてもよいでしょう。末尾に “率” を付けて「時間選好率」とすると、「”いま”の価値を高く評価する度合い」を示します。
簡単な例でいえば、「今すぐ1万円が貰える権利」と「1年後に1万5千円が貰える権利」ならどっちを選ぶ?と聞かれたときに、前者の今すぐ貰う方を選ぶなら時間選好率が高い、後者の一年後に貰う方を選ぶなら時間選好率が低い、と表現します。
マシュマロ・テストをこの観点で捉え直すと、このテストは「今すぐ得られるマシュマロ1つの価値」と「15分後に得られるマシュマロ2つの価値」を比較しているということになります。つまり後者を選んだ時間選好率が低い子供たちの方が、将来有望であったと説明されます。
ニッセイ基礎研究所が2011年に実施した調査では、時間選好率が高い人ほど貯蓄額は低下することが示されています。時間選好率が高いほど “いま” の消費を優先する傾向があるので、至極当然の結果と言えるでしょう。
【参考】時間選好率が高い個人ほど貯蓄額は低下する | ニッセイ基礎研究所
マシュマロ・テストの更なる考察
さて、マシュマロ・テストの結果は、発達心理学の側面では「自制心(我慢強さ)」や「欲求充足の先延ばし」、行動経済学の観点では「時間選好」で説明されました。このことから、ビジネス書や一般の情報では両者を同一視して、「時間選好率=我慢強さ」などと説明しているものが多く見つかります。
【参考】行動経済学で賢くなる: 週刊東洋経済eビジネス新書No.244
でも、本当にそうでしょうか?
もちろん何らかの相関関係が存在する可能性はあるでしょう。しかし、相関関係があるとしても直ちに因果関係や同一であると判断してしまうのはあまりにも短絡的です。私にはどうにもこの二つが同じものには思われません。ここでは思考実験を通して、もう少しマシュマロ・テストの結果を深堀りしていきましょう。
「自制心」が先か、「時間選好」が先か?
おっと、ここでちょうどテストを終えた子供たちが部屋から出て来たようです。マシュマロをすぐ食べてしまった子にちょっとインタビューしてみましょう。
時間選好率が高い子の場合
さて、この男の子が本当に4歳児なのかはともかく、彼は明らかに「15分後に得られるマシュマロ2つの価値」よりも、「今すぐ得られるマシュマロ1つの価値」の方を高く評価しています。つまり、時間選好率が高いということです。結果として彼は2つ目のマシュマロを手に入れることが出来ませんでしたが、この場合、彼は「自制心が弱く」「我慢が出来なかった」ということになるのでしょうか??
いいえ、そんなわけ、ありませんよね。彼はそもそも最初から今すぐ食べた方がよいと判断しているので、全く待つ必要も、我慢する必要もありません。従って、マシュマロ・テストでは自制心よりも時間選好率の方が先に判定されていると考えるのが自然です。このパターンでは、マシュマロ・テストは自制心なんて全く測っていないのです。
時間選好率が低い子の場合
他方、最後まで涼しい顔でマシュマロを食べずに待ち、見事2つ目のマシュマロをゲットした子にも話を聞いてみましょう。
先程とは逆に、この子の場合は「今すぐ得られるマシュマロ1つの価値」よりも「15分後に得られるマシュマロ2つの価値」の方を高く評価しています。つまり、時間選好率が低いということです。そしてその選択をした場合には、当然マシュマロを食べずに待つ必要性が発生します。これが「我慢」です。つまり、我慢は欲求充足を先延ばしすると決めたときに初めて必要になるのです。
また、面白いことに、時間選好率が顕著に低い場合、我慢することの困難さは和らぐことも分かります。時間選好率がとても低い人にとっては、「今すぐ、それを食べてしまうなんて、とんでもない!」という気分であり、そんなに必死に我慢しているという感じはありません。ジッと待って必ずや2つ目をゲットする、その一択です。
どうやら「やっぱり2つの方がいいよなぁ、でもな~、今すぐ食べたいよなぁ、あぁ悩ましい!」と狭間で揺れ動いている人が、最も多大な我慢を強いられるようですね。
そのほか、マシュマロを隠して見えないようにしたり、マシュマロを絵に変えたりするだけで、我慢できる時間が伸びることが分かっています。これらは「我慢を楽にするテクニック」として活用できるでしょう。
以上から、マシュマロ・テストの流れは下記のようにまとめられます。
- まず時間選好率が判定され、今すぐ消費するか、欲求充足を先延ばしにするかの選択を迫られる。
- 時間選好率が高く、今すぐ消費することを選んだ場合、それでお終い。我慢は不要。
- 時間選好率が低く、欲求充足を先延ばしにすることを選んだ場合、その先延ばしを成功させるための行動として、我慢が必要となる。
- ただし、時間選好率が低いほど我慢の必要性は少なくなり、楽に我慢できる。単に見ない、隠す、考えないようにするだけでも有効。
Figure.1 マシュマロ・テスト 判定フロー
これで、すっきり整理できましたね。
マシュマロ・テストは単純に「自制心(我慢強さ)」を測っているわけではなく、「時間選好率」と「自制心(我慢強さ)」の独立な二つの要素を複合した結果を観測しており、且つ前者の方が先に判定されていると考えるのが妥当でしょう。
時間選好率の高低は、本来は単に好みの問題
さて、次に思い浮かぶ疑問は、「時間選好率の高い・低いは何によって決まるのか?」です。
最も基本的な要素としてはこの答えは簡単で、時間選好率の高低は、本来は単なる好みの問題です。先程インタビューした2人の回答を見れば分かるように、「今すぐ得られるマシュマロ1つの価値」と「15分後に得られるマシュマロ2つの価値」のどちらを高く評価するかは個人の自由で、個々の価値観によって決定されます。本来どちらが絶対に良いとか悪いとかいうものではありません。
マシュマロ・テストがややこしいのは、「量(個数)」と「時間」の2変数を同時に変えてしまっているからです。考えやすくするため、片方を統一して変数を1つにしてみましょう。
(これは「変数を一つにする」という “単純化” のテクニックです。→「お勉強のコツ」の話。②単純化)
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これなら、みんな赤字の方を選びそうですよね。でも、人間はそう単純ではありません。
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全く同じように量と時間を変えてみましたが、これだと皆が必ずしも赤字の方を選ぶとは限らないのではないでしょうか。人間いつも多い方や早い方がいいとは限りません。これらの例を考えてみれば、選択は人それぞれの好みであり、時間選好率も人によって(また状況によっても)まちまちであることが理解できるでしょう。
しかしながら、実は時間選好率は個々人の好みとは別に、ある環境条件によっても大きな影響を受けることが分かっています。
それは、社会的・経済的環境です。
「差し迫った危機」は、時間選好率を高くする
例えば「貧困」は、時間選好率を高くすることが知られています。低所得者層と高所得者層の時間選好率を調べ、低所得者層の方が3~5パーセント高くなることを示した研究結果があります。さらに人種や学歴を考慮するとその差はより広がるとのこと。
【参考】Poverty and the Rate of Time Preference: Evidence from Panel Data
以下の記事の女性の言葉が貧困者の心情をとてもよく表していると思います。
「ウェンディーズに行って5ドル(約600円)のハンバーガーを食べるために使うのをやめたところで、貧乏から解放されるなんてことはないです」と語る女性は、日々の小さな楽しみを削ってまでもお金を貯め、大きな買い物をすることに価値を感じていないとのこと。また彼女は「貧しさには希望がなく、長い目で考える思考を奪います。(中略)」と記しています。
さらに彼女は「一か月後に何が起こったとしても関係ない。それは今日起こっても来週起こっても同じ事。私たちが将来のことを考えないのは、そうすることで自分の心が折れそうになるから。最善の方法は希望を持たない事よ。目の前にあることだけを見て生きていくの」としており、ある種の絶望感のようなものが根底に流れている様子を語っています。
引用)なぜ貧困に陥ると間違った決断をしてしまうのか?そこには避けられない心理的要因があった – GIGAZINE
貧困は、長期的な視野で物事を考えることの意欲を奪い、短期的で確実な目先の欲求を優先してしまう強い圧力となると考えられます。そして、きっとこの効果は経済的な状況だけに限ったことではないでしょう。
- もし、ずっと欲しかった限定商品が在庫残り1つだったら?(今すぐ買わないと売り切れちゃう!)
- もし、儲かっていた仮想通貨の相場がじわじわと下がってきていたら?(今のうちに利益確定しないと損しちゃう!)
- はたまた、もし、「余命があと1年」と宣告されたら?(早くあれだけは絶対やらなきゃ…!)
このような何らかの「差し迫った危機」が近づいてきている場合、その人の時間選好率が高くなることは必然だと考えられます。
長期的な将来の未確定要素が大きいときには、短期的な成果を優先し、確実な策を取って早く状況を確定させた方が適切な場合があるでしょう。これはこれで、緊迫した状況下では合理的な判断であるともいえるのです。
「時間選好率が低い」とは、「長期的な視野を持つことができる」ということ
さて、もともとマシュマロ・テストで見極めたかったことは、このテストの結果と学業の成績や経済的安定などの「社会的成功」との関連性でした。そして「社会的成功」は、一般的に長期的な努力や訓練の結果得られる「長期的な成果」であることにほとんど証明の必要は無いでしょう。そして長期的な成果を得たければ、「長期的な視野」で物事に取り組む必要があります。
つまり、本来は時間選好率の高い低いに優劣はなく好みの問題なのですが、社会的に成功したければ、長期的視野を持ち、時間選好率を低く抑える方が有利だということです。結局、マシュマロ・テストは、「長期的な視野を持てる子は、長期的に成功する」という、ほとんど自明のことを示していると考えられます。
もちろんそれを達成するために「我慢」は必要になりますが、既に考察したように、はっきりと明確な長期的視野を持って目標を見据えていれば、精神的に楽に我慢することが可能になります。「納得のうえでの我慢」と言ってもよいでしょう。兎にも角にも、まず「長期的視野を持つ」ということが、社会的成功の鍵になると言えるのではないでしょうか。
「貧乏になる考え方」は連鎖する
さて、直近2018年5月25日に発表されたマシュマロ・テストの大規模な再実験の結果では、被験者の数を900人以上に増やし、人種・親の学歴・家庭の年収などの環境条件を調整して結果を整理すると、「2つ目のマシュマロ」と将来の社会的成果の間に有意な相関は無く、将来の社会的成功に大きな影響を及ぼしているのはその子供の「社会的・経済的環境」であった、という結果が示されました。
そもそも、ウォルター・ミシェルの元研究では、「家庭の年収」のような「2つ目のマシュマロ」と「社会的成功」の両方の結果を生む共通因子の存在が考慮されていない(疑似相関;2つの事象に因果関係がないのに、別の共通の要因によって因果関係があるかのようにみえること)ようですし、調査対象がスタンフォード大学の関係者の子どものみであり、これはかなり偏ったサンプルと言わざるを得ません。統計調査で用いるサンプルは十分にランダムでなければならない、この大前提すら満たしていない調査であったわけです。
結局、「2つ目のマシュマロ」と「社会的成功」が相関していたわけではなく、それらは「社会的・経済的環境」という共通の原因から生じた2つの結果であったということですね。
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…結局、こういう構図だったということですね。考えてもみれば、大きなケーキやチョコレート、クッキーなどを普段から我慢なく食べている子は、マシュマロひとつにそれほど強い欲求を抱くでしょうか。裕福な家庭の子供は、上述の「時間選好率が低い子」である可能性が当然高いと予想されます。
身も蓋もない結論ではありますが、でも、どうやら少し大きな流れも見えてきたようです。これはまさに、「貧困の連鎖」のメカニズムの一端を表しています。富める者はより富み、貧しいものはより貧しくなる。それが直接的な経済的格差、教育格差だけでなく、思考の方向性・行動様式のレベルまで侵食してきていると捉えるべきでしょう。
このことから、後者には厳しい現実が突きつけられていることがが伺えます。では、後者に生まれたら不運だと思って諦めるしかないのでしょうか?「貧困の連鎖」を断ち切ることはできず、負のスパイラルに身を任せるしかやれることは無いのでしょうか?
いえ、何らか出来ることがあると私は考えます。
「貧困」が先か、「貧困になる考え方」が先か。これらは互いにその性質を強め合う相乗効果の関係にあるでしょうし、所謂「鶏が先か、卵が先か」問題のように思えるかもしれませんが、私は「貧困」が先だと断言します。生まれた時点で家がとても裕福であったり貧乏であったりすることはあっても、生来の時間選好率の好みの差なんてたかが知れているからです。
「”貧困” が悪いんじゃない、”貧困になる考え方” が悪いんだ!」とはよく言われますが、「貧困であること」それ自体が、その「貧困になる考え方」を生み出す大きな要因になっている事実を見逃すことはできません。大部分は後天的な学習によって形作られていると考えます。
想像してみてください。マシュマロ・テストで必死に15分我慢した挙げ句、「さっきもう1個あげると言ったのは嘘でした~、はい、残してた1個も没収です。騙される方が悪いんだよ、バーカ」という仕打ちに遭った子は、もう二度と15分待つことはないでしょう。長期的な努力が報われず無にされる仕打ちを繰り返し経験した子供は、「今手に入れられるものは、今すぐ手に入れてしまった方がいい。でないと、すぐに無くなってしまう。先のことを期待しても無駄」ということを学習してしまうのです。
そのような負の学習をしないため、また親として子供に負の学習をさせないためには、どのような考え方・方針が望ましいのでしょうか?
最後に、これを考察しましょう。
マシュマロ・テストから学ぶ、人生と子育ての戦略
マシュマロ・テストが示す真理と教訓
おさらい。マシュマロ・テストから得られる真理と教訓は、以下のようにまとめられます。
- 長期的視野を持つ者は、長期的成功を収める。短期的視野を持つ者は、短期的成功を収める。社会的成功は長期的成功に分類されるので、社会的成功を収めたければ、長期的視野を持つべし。
- 短期的に差し迫った問題があると、長期的視野を持つ妨げになる。差し迫った問題を取り除き、安心して長期的課題に取り組めるような環境づくりが大事である。
- 明確な長期的視野に基づいて行動すれば、短期的な後退・失敗・辛抱・我慢にひるむことなく、納得のうえで前に進んでいける。目先の利益ではなく、最終的な結果をベースに判断すること。
子育てのなかで親ができること
長い目で見守る
とにかく、長期的視野で物事に取り組むことの重要性を理解してもらうことが大事です。すぐに結果が出なくとも構わない。ゆっくりでも、しかし確実に結果が出る経験を重ねれば、それが成功体験となり、その場しのぎの対応ではなく、じっくりと物事に取り組めるようになります。手っ取り早くその場をしのぐだけのズルをしていたら、それとなく軌道修正してあげましょう。
短期的な失敗を責めない
短期的な後退、ちょっとやそっとの失敗は、長い目で見れば取るに足らない。それを親自身も理解し、子供に伝えることです。「ま、そういうこともあるよね」「というか、そんな毎回うまくいくわけないよね」「でも全然問題ないよ、大丈夫!」という心持ちで、深刻な気持ちを軽くしてあげましょう。「失敗してもいいんだ」と思えることが、次の挑戦への勇気となり、長期的な目標に取り組むときの精神安定剤になるでしょう。
約束を守る
せっかく楽しみにしていた約束を、大人の事情で反故にするのはダメです。何が何でも絶対に約束は守りましょう。しょっちゅう約束をフイにされる子供は、遠い先の未来を信じることが出来なくなります。長期的視野は、長期的な努力がきっと報われると信じられる心から育まれます。もちろん、努力が必ず報われるとは限りません。(→「努力は必ず報われる」の嘘と、信じちゃった場合の弊害の話。)でも、報われると「信じられる」かどうかが、大事なのです。
安心できる環境を整える
いつも何か気掛かりなことがあり、ソワソワしていると、じっくり腰を据えて長期的な課題に取り組むのは無理です。物理的にも、精神的にも、安心安全な環境を確保するのは親の役目です。不安や差し迫った危機を取り除き、子供が伸び伸びと活動できるサポートをしましょう。
「結果ベース」で考えさせる
これは「結局のところ」「最終的に」マシュマロ1つかマシュマロ2つ、手に入れるのだったらどっちがいいのか?を考えるということです。今現在の状況や途中経過ではなく、最終的な結果を想像させ、自分自身に現在の行動を選択させるということ。「結局最後に、どうなっていたら一番うれしい?2つがいいの?なら、我慢しなきゃね。」それを考える癖をつけることが、長期的な計画性や想像力の向上につながります。
4歳の時点でマシュマロ・テストに合格するかどうか?そんなことは大して重要ではありません。大事なのは「長期的視野を持つこと」、ほぼこの一点に集約されます。安心して未来を信頼できるようなモチベーションを与えること、それが大事だと思います。
今回のまとめ
- マシュマロ・テストは、自制心だけを測っているとは言えない。時間選好と自制心の複合的な結果を測っており、かつ前者の方が先に判定されている。
- 社会的成功のためには、長期的視野を持ち、時間選好率を低く抑えた方が有利。しかし差し迫った危機は時間選好率を高くする。まず安全を確保し、安心して長期的課題に取り組める環境が必要である。
- 大事なのは、長期的視野を持つこと。常に最終的な結果を想像して行動しよう。そうしていれば、最後に笑うのは、君だ。
ではでは今回はこの辺で。
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